近年、子どものスギ花粉が増えていることをご存知でしょうか。花粉症の症状は風邪と似ていて判断が難しいケースも多く、気付くのが遅ければ適切な対処をしてあげることができません。今回は子どもの花粉症の見つけ方や対策について解説します。
子どもの花粉症はどれくらい増えているの?
日本における花粉症で最も有名なのはスギ花粉ですが、実は2014年の段階で、花粉症の原因となる花粉は、なんと61種類も報告されています。スギ花粉だけで見ても、近年のその発症率は0〜4才で3.8%、5〜9才で30.1%、10〜19才で49.5%と、約20年前と比べて2〜3倍になっており、子どもの花粉症は明らかに増加しています。
花粉症で鼻水が止まらないのはとてもつらいですよね。大人でも、花粉症の症状がひどいと頭がぼーっとして集中力が落ちたり、睡眠不足になったりしますが、これは子どもも同じです。勉強に身が入らなくなったり、日中の眠気につながったりと、生活の質が著しく低下する場合があるため、早めに気づいて対処してあげたいものです。
花粉症の症状が出る時期は?
花粉症は、季節によって原因となる花粉が異なります。一般的に、スギは2〜4月、ヒノキは3〜5月、イネ科は5〜9月、ブタクサは8〜9月に症状が出るため、これらは季節性アレルギーと呼ばれます。
一方、通年性アレルギーと言われ年間を通して症状が出るものもあり、この原因で主なものはダニ、ハウスダスト、カビなどです。
季節性アレルギーも通年性アレルギーも、基本的には原因となる物質を体内に入れないようにするのがポイントです。季節性の花粉症ならばマスクやメガネで予防したり、帰宅した際には服についた花粉を取り払ったり、通年性の場合はこまめな喚起や掃除をしてダニやハウスダストを除去する努力が必要です。
子どもの花粉症に気づくには
子どもの花粉症の症状は、基本的に大人と同じです。親から見てもわかりやすい症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血など。また鼻づまりなどからくる喉の乾燥、咳、口呼吸、いびきなどが見られることもあります。
これらは風邪の症状と似ており、すぐに花粉症と気づくのはなかなか難しいです。毎年花粉の時期に症状が出る、親が花粉症である、などがきっかけになるかもしれません。
風邪か花粉症かわからない時は、日頃の様子も注意深く観察してみましょう。例えば、花粉の飛散量が多いと予想されている日と雨の日、外出時間が長かった日と室内で過ごす時間が長かった日などで症状に違いがあるか、などがポイントです。
子どもは年齢が低いほど、自分の辛い状況を的確に表現して訴えることが難しく、そのため受診のタイミングが遅れることもあります。また薬が処方されたとしても、鼻水や目のかゆみを抑える薬は、風邪のときにもらう薬と似ています。花粉症かどうかをはっきりさせたい場合は、アレルギー検査を受けるのもひとつの手段です。
アレルギーに気づけず中耳炎になった事例
私の子どもは3才の時、通年性アレルギーのダニ、ハウスダストが陽性であるとわかりました。夏風邪かなと思い、自宅で電動の鼻水吸引器を使いながらしばらく様子を見ていたのですが、3〜4週間たっても全く改善の兆しがなく、子どもは常に鼻をすすっていました。さすがに小児科に行こうかと思い始めた矢先、突然、夜に耳が痛いと言って泣き出したのです。慌てて耳鼻科を受診したところ両耳とも中耳炎になっていました。
中耳炎の治療と合わせて長引く鼻水について相談したところ、父親が花粉症であることや、肌のかゆみの症状も見られていたことから、先生からはアレルギー検査をすすめられました。結果、ハウスダストとダニが陽性、この時点ではスギをはじめとする花粉は陰性でした。しかし2年後、スギ花粉の時期にまた鼻水が止まらなくなり、もしやと思い改めてアレルギー検査をしたところ、スギ花粉もかなり強いレベルで陽性になっていました。
このように、子どもはまだ鼻をかむことすら十分にできず、ましてや花粉症などのアレルギーについての知識も持ち合わせていません。やはり日ごろから健康で元気な状態を把握しておき、変化があった時に親が気づいてあげられるようにしておくことが大切だと感じました。
子どもの花粉症対策
花粉症やアレルギーの対策の基本は、その原因となるアレルゲンを遠ざけるようなセルフケアが大切です。外出時にはマスクやメガネをつける、換気や空気洗浄機を使ってこまめに掃除をする、加湿器を使って室内の乾燥を防ぐなど、できることから始めてみましょう。
また花粉症を疑った場合、何科を受診すれば良いのか迷うかもしれません。小児科、耳鼻科、アレルギー科などの選択肢がありますが、基本的にはかかりつけの小児科または耳鼻科でまず相談するのが良いでしょう。症状として目のかゆみだけがひどい場合には、はじめから眼科に行って目薬を処方してもらうのもおすすめです。
市販薬でもある程度は対処できますので、受診できないときや、ひとまず早く症状を抑えたいならば近くの薬局やドラッグストアで相談してみるのも良いかもしれませんね。
まとめ
近年、花粉症の根本的な治療薬が開発されました。これまでの薬は一時的に症状を抑えるだけでしたが、新しい薬にはそもそもの体質を改善して花粉症の症状を軽くすることが期待できます。子どもの花粉症対策は、薬の力も頼りながら、日々のセルフケアについてもていねいに教えてあげたいですね。
引用元:鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2020年版(改訂第9版)