夏の暑さから解放されて徐々に気温が下がり、秋から冬にかけては乾燥が気になる季節です。空気が乾燥すると咳や痰などの呼吸器系の症状が出やすくなります。
そして、肺は皮膚の健康や、外から入ってこようとする病気をはねのける力とも関連しており、健康を守るために是非整えておきたいところです。
病院を受診すれば治療を受けることができますが、病院やお薬を頼る前に日々の暮らしの中で家族みんなで病気になりにくい体質を作って予防することも大切です。
今回は、東洋医学・薬膳の知恵を使って、肺が弱っている体質に傾いていないか確認するための体質チェックや今日から簡単に取り入れられる肺を労わる食生活のコツ、暮らし方のコツをお伝えします。
東洋医学の五臓【肺】のはたらき
西洋医学で【肺】といえば臓器そのものを指しますが、東洋医学では違う捉え方をします。
東洋医学には五臓(ごぞう)という考え方があって五臓とは「肝・心・脾・肺・腎」の5つの臓(ぞう)のことです。東洋医学の臓は臓器の名称を指すだけではなく、臓器の働きや働きによって生じる現象も総合して捉えます。
各々の臓は互いの働きを助け合ったり、過剰に働きすぎないように抑制しあったりしながら病気になりにくい健康な体質になるように調和をとっています。
では、五臓の【肺】の働きについて説明します。
肺の主なはたらき
◎呼吸を行いガス交換をする
空気を吸って体内に取り込み、体内を巡ってきた汚れたガスを外に出します。
◎生きるために必要な成分を巡らせる
肺という大きなポンプでエネルギーや潤い成分などを体の隅々まで巡らせます。また、余分な水分を膀胱に降ろしたり、汗として外に出したりします。
この外に出すという働きの中には皮膚に張りや潤いを与えたり、外部から侵入しようとする病気の原因をはねのける力もあります。
肺は乾燥に弱い臓です。乾燥の季節に肺のコンディションが崩れると呼吸器の不調、皮膚トラブルや病気に対する抵抗力の低下に繋がるため整える習慣をつけましょう。
肺が弱っていませんか?体質チェック
乾燥が気になる季節は家族みんなで肺を労わる健康づくりを習慣づけると良いですが、肺が弱っている体質に傾いている方は特に体質改善に取り組んでおきたいところです。
体質チェックリストで肺が弱っていないか確認してみましょう。
☑ 顔色が白い
☑ 肌が弱い・敏感肌
☑ むくみやすい
☑ 花粉症、鼻炎などアレルギー体質がある
☑ アトピー性皮膚炎がある
☑ 湿疹ができやすい
☑ 風邪をひきやすい
☑ 鼻の周りに吹き出物ができやすい
☑ 鼻水がよく出る
☑ 鼻がつまりやすい
☑ 声が小さい
☑ 秋になると体調を崩しやすい
☑ 便秘がち
☑ 辛い食べ物をよくとる食生活である
☑ 悲しい気持ちになることやネガティブ思考になることが増えた
体質チェックに当てはまる項目が5つ以上あった方は肺が弱っている体質に傾いています。早速肺を労わる食生活や暮らし方を取り入れてみましょう。
今日からできる薬膳的食生活【肺】を労わる食べ物とは
薬膳と聞くと、特殊な香辛料や専門店でしか入手できないような薬膳食材を活用するイメージがあるかもしれません。
ですが、薬膳について簡単に説明すると、季節や住んでいる地域、体質や体調などに合わせて、食べ物のもつ力を活用する食生活で心身を健康にしようという考え方です。特殊な香辛料や食べ物を使用するという決まりはありません。普段入手しやすいスーパーマーケットで購入できる食べ物で料理をしても薬膳の効果は十分得られますよ。
◎肺を潤して乾燥を防ぐ食べ物
梨 蓮根 大根 白菜 山芋 白ごま 白きくらげ ゆり根 松の実 いちじく 豆腐
はちみつ など
肺を潤して乾燥を防いでくれる食べ物は白い色のものが多いのが特徴です。ただし、白い色の食べ物は体を冷やす作用のあるものが多いので、体が冷えやすい体質の方はネギや生姜、鮭、サバなど体を温める作用のある食べ物と組み合わせるとバランスがとれます。
◎肺を温めて機能を高める食べ物
もち米 鶏肉 キノコ類 豆類 イモ類 クルミ など
キノコ類やイモ類はみそ汁やスープに入れると取り入れやすいですね。
薬膳的食生活スイーツ 梨と白きくらげのコンポート
肺を労わる食べ物を組み合わせて、簡単にできる薬膳スイーツをご紹介します。
程よい甘さが美味しいので、是非お試しください。
材料 (2~3人分)
・梨 1/2個
・白きくらげ(乾燥) 4グラム
・水 400cc
・レモン汁 少々
・お好みではちみつ 大さじ1
・お好みでクコの実 少々
作り方
1 白きくらげ(乾燥)は洗って30分以上水に浸して戻す
2 白きくらげが柔らかくなったら根元の固い部分を取り除いて、一口大にちぎる
3 鍋に水400ccと白きくらげを入れて中火で煮る
4 水が沸騰したら弱火にしてトロミがでるまでコトコト煮る
5 一口大に切った梨を鍋に入れる
6 梨に透明感が出て柔らかくなるまで煮る。水か少なければ加える
7 火を止めてレモン汁 はちみつを加えてよくまぜる
8 できあがり トッピングにクコの実を乗せると彩りがよいです
薬膳POINT
梨、白きくらげ、はちみつは、どれも肺を潤してくれる食べ物です。特に、梨は口の渇きを癒したり、体の熱を冷ます作用がありますので、体がほてりやすい体質の方や更年期でホットフラッシュにお悩みの方にはおすすめの食べ物です。
冷えやすい体質の方は、体を温めてくれる作用のあるシナモンパウダーをかけて食べても美味しいですよ。
肺を労わる暮らし方のコツ
健康づくりは、食生活のほかにも不調を招かない習慣も大切です。
肺を労わる暮らし方のコツをお伝えします
◎できるだけ乾燥しない環境を作る
繰り返しになりますが、肺は乾燥に弱い臓です。寝室や職場など長時間過ごす空間では湿度が40%以下にならないようにしましょう。
加湿器を設置できればよいですが、電源がなくても使用できる加湿グッズなど、バリエーション豊富に市販されていますので活用する習慣をつけましょう。
◎深い呼吸でリラックスする
マスクをつける暮らしが長くなってきました。その影響で呼吸が浅くなり、深呼吸をするための筋肉のしなやかさが低下しています。体の中で生きるために必要な成分を巡らせる働きがある肺が力を発揮するためには、新鮮な空気をたっぷり吸うことが大切です。定期的に深呼吸をすることを習慣づけましょう。
まずは、体の中にある空気を吐ききってから、深く空気を吸い込むようにしましょう。
深呼吸について説明してもわかりにくい年齢の子どもには、シャボン玉や風車など、吹いて遊ぶおもちゃの活用も効果的です。
◎悲しみやストレスを遠ざける
悲しみやストレスは呼吸を浅くして肺の働きを弱くします。ひどくなると、声が小さくなったり出にくくなったりすることもあります。悲しみやストレスの原因となる事柄からはできるだけ距離をおいたり、ストレス解消や自身の心の癒しになることを積極的に暮らしの中に取り入れましょう。
健康づくりを続けるコツは?
コロナ禍の影響を受ける暮らしが長く続いていることで、自分自身や家族の健康について考えたり、食生活を含めた健康づくりについて考えることが今までよりも増えましたよね。
でも、あれもこれも実施することが生活を送る上で負担になって3日坊主になってはもったいないです。
買い物をする時の食べ物の選び方を、季節や体調に合わせて一工夫したり、家事や育児の合間に深呼吸や簡単なストレッチをするなど、無理なく続けられる方法を暮らしの中に取り入れてみませんか?
みなさんがすこやかな毎日を送れることを願っています。