今年の冬はコロナウイルスのオミクロン株の流行がありましたが、インフルエンザによる大きな混乱はなく、冬の風邪流行シーズンも終わりに近づいてきた印象がありますね。
今回は、薬剤師免許を持ち、薬局と病院の両方で勤務経験のある薬剤師ママが、自身の子育ての経験も踏まえて、子どもの薬にまつわる様々な豆知識をお伝えします。病気や薬とはなるべく無縁でありたいものですが、いざという時に思い出してもらえたら嬉しいです。
今さら聞けない!ジェネリック医薬品って何ですか?
ジェネリックってどうして安いの?
ジェネリック医薬品。テレビコマーシャルでも見かけることがあると思いますが、実は、どのような薬なのかを知らないという声はまだまだ多くあります。私が以前、小児の薬に関してオンラインイベントを開催したときも「なぜ安いのでしょうか?にわか品の薬ですか?」という質問を受けました。
ジェネリック医薬品とは、厚生労働省に認可された正真正銘の医薬品です。新薬(先発品とも呼ばれ、この世の中に初めて出てきた新しい薬のことを指します。)の有効成分と同じものを使っており、その効果もきちんと認められているので安心してお使いいただけます。
新薬に比べてジェネリック医薬品が安い理由は、研究費用がかかっていないからです。新薬は、10年〜20年という長い歳月と莫大な費用をかけて開発され、一定期間の特許が認められています。この特許期間が満了となると、他の医薬品メーカーも同様の成分を使って同じ効果がある薬を作れるようになります。もちろん、薬の効果や安全性を確認する実験は行われますが、ここには新薬ほどの研究費用はかかりません。こうしてできあがった薬をジェネリック医薬品と呼び、場合によっては新薬の半分以下の値段になることもあります。
小児におけるジェネリック医薬品のメリット・デメリット
小児の薬において、新薬とジェネリック医薬品の違いは、錠剤の大きさや、粉薬の味のバリエーションに多く見られます。ジェネリック医薬品が出てくる段階で、すでに新薬の発売から十数年経っていることが多く、新しい技術によって飲みやすく改良されたり、飲み間違いをしにくい工夫がされていたりするものも多いです。
一般的に、錠剤が飲めるようになってくるのは小学生以上が目安ですが、錠剤が小さくなり飲みやすくなったものも増えていますので挑戦しやすいかもしれません。粉薬やシロップ剤が出されることが多い幼児期には、味の種類が豊富なジェネリック医薬品を試してみることをおすすめします。
薬の種類によっては、まだ世の中にジェネリック医薬品が存在しないものもあります。また、薬の成分としては新薬と同じものを使っていますが、その他の添加物等はメーカーによって若干異なります。そのため非常に稀ではありますが、添加物の違いによって服用後の体調に変化を感じることがあるかもしれませんので、初めての薬を服用する際は、念のためお子さんの体調変化を注意深く観察してください。
今さら聞けない!ドライシロップって何ですか?
結局のところドライシロップは粉?シロップ?
ジェネリック医薬品についての質問同様、ドライシロップに関しても実はよく分かっていないという声が多くあります。ドライシロップとは、「完全に水に溶ける粉薬」と理解してください。イメージとしてはフリーズドライのようなものですね。
粉薬のように先に口の中に水をふくんだ状態で飲んでも良いですし、水に溶かしてシロップのように飲むこともできます。完全に溶かしたあとも甘みを感じるようにつくられているため、小児の薬には非常に多くのドライシロップがあります。処方箋には「◯◯薬DS」と表記されており、DSはドライシロップの略になります。
ただ、抗生剤の中にはどうしても苦味が残るものもあり、苦いと言って嫌がるお子さんがいるのも事実です。また、水以外のものに溶かす場合は相性の問題もあるので注意が必要です。溶かして良いもの・悪いものなど個々の特徴については、薬を受け取る薬局で詳しく質問してみると良いでしょう。
粉薬とドライシロップの違いとは
粉薬とは水に溶けないものを指します。さらに分けると、散剤と呼ばれる粒子が細かいものと、顆粒と呼ばれるつぶ状のものがあります。
水やお茶などに混ぜても良いもの、混ぜない方が良いものがあるので、こちらも個々に確認が必要です。そしてドライシロップと違って完全には溶けないため、しばらく放置するとコップの底に粉が沈殿するのが特徴です。液体に混ぜる場合は、水分を少なめにしてよくかき混ぜてから、コップに粉が残らないよう、いっきに飲んでくださいね。
粉薬とシロップ、どちらがいいの?
粉薬とシロップのメリット・デメリット
同じ成分、同じ名前の薬であっても、粉薬(ドライシロップを含む)と液体のシロップ、両方のタイプをつくっている医薬品メーカーは多くあります。粉とシロップ、それぞれにメリット・デメリットがあるので、お子さんの好みにあわせて処方してもらうことも可能です。
シロップの場合、規定量を測って飲むだけですし、とても甘くておいしいので、子どもも喜んで飲んでくれる場合が多いです。一方、シロップの管理で気をつけるべきポイントとしては、冷蔵庫で保管、計り取る前に中身を混ぜて均一にする、期限は長くて1週間程度などがあります。
粉薬も甘みをつけたものは多くありますが、どうしても後味に苦みを感じてしまう薬も少なくありません。しかし残った薬を数カ月間、自宅で保管しておくことができるのはシロップにはないメリットと言えるでしょう。
いざという時のために2〜3か月なら取っておいて良いもの、必ず最後まで飲み切って欲しいもの、残ったら破棄すべきものなど、薬の種類や性質によって細かな注意点が異なりますので、薬の受け取りの時に説明をよく聞いてくださいね。一般的には、抗生剤は全て飲み切る、熱冷ましや咳止め、鼻水の薬は一定期間なら保管可能なことが多いです。
薬剤師ママとしてのおすすめは実は粉薬
薬の成分が同じであれば、子どもの好みや、親の管理のしやすさで、粉とシロップ、どちらを希望しても構いません。しかし私自身3人の子どもを育てている母親でもあり、自身の子育ての経験から、特に子どもの年齢が0〜1才のうちは粉薬での処方をお願いしていました。
シロップにしない理由は、子どもが嫌がったとき、なんとか飲ませるための代案がないからです。
2〜3才になってくると、何のために薬を飲むのかという話を理解できるようになってきます。「風邪を治すために薬が必要、嫌だけれど飲むと早く治る」と理解して、自らの意思で飲むこともできるようになってきます。
しかし、まだ言葉によって意思疎通をはかることが難しい0〜1才のときは、「嫌なものは嫌!」と薬を拒否することもしばしば。粉であれば、分からないように少しずつ他の食べ物に混ぜる、お薬団子を作って口の中に入れてしまうなど、なんとか薬を飲ませることができます。
しかしシロップの場合、本人が飲み込んでくれないことには、他に飲ませようがありません。そのため、両方を試しながら、シロップが難しいと感じるようなら粉薬一択にするのもひとつです。
先生に言いにくいことは◯◯で聞いてみよう
私の場合、第一子が通っていた小児科は、0才の赤ちゃんには積極的にシロップを選択する病院でした。しかしあるとき、生後8か月だった子どもにシロップを完全に拒否されてしまい、困り果てた経験があります。
しかし診察室で「お薬はいつも通りシロップで出しますね。お大事に。」と言われてしまうと、なんとなく「シロップではなく、他の薬がいいのですが…」とは言い出せなかった記憶もあります。
逆に、粉薬が飲みにくいからシロップを試してみたい、余っている薬があるから今回もらう分は少なくて良いなど、薬の変更について先生に相談するタイミングを逃してしまったという話は、薬局の窓口でも伺うことがあります。
そんなときは、薬局に処方箋を持っていく前に、病院の受付で聞いてみることをおすすめします。理由は、処方箋の変更が必要な場合、薬局から問い合わせをするより待ち時間が短くなるからです。
薬の効き目、飲み方、保存方法などについては薬剤師が説明しますが、薬の種類や数を決めるのは医師の役割です。薬局から問い合わせをすることも可能ですが、やはり時間がかかります。「先生に言いそびれてしまった!」と思い出したことがあれば、病院の支払いの時などに窓口で一緒に聞いてみると案外スムーズに解決することもありますよ。
お薬手帳アプリの活用法
お薬手帳は紙か?アプリか?
お薬手帳の存在はずいぶんと浸透してきたと感じていますが、最近はアプリで管理するタイプが出てきていることをご存じでしょうか。薬局に持っていくのを忘れるということも減りますし、一見、時代の流れに沿った方法のように感じられます。
しかし私は、アプリでの薬管理はもう少し様子を見ても良いかもしれないと感じています。なぜならば、薬局によって導入しているアプリが異なる場合があるからです。薬局が変わると対応アプリも変わってしまいますし、そもそもアプリ未対応の薬局もまだ多くあります。お薬手帳のメリットのひとつに、いつ・どこの薬局でもらった薬であっても情報を一元管理できるという点がありますが、これが活かしきれていない印象です。
かかりつけの薬局が決まっていて、他の薬局には絶対に行かないという場合はアプリも活用できますが、そうでなければ今後の普及の様子を待ってからでも遅くないかもしれません。
処方箋の写真を先に送って待ち時間を減らす方法
薬の管理という面では、お薬手帳アプリを使わないという選択肢があるとお伝えしましたが、実はアプリの中には、子育て世帯にぜひおすすめしたい機能もあります。それは処方箋の写真を先に薬局に送るというものです。
アプリが普及するまではFAXで送るという手段がとられていましたが、今はスマートフォンから写真を送るだけなので手軽にできるようになりました。
これは、先に処方箋の写真を薬局に送る→薬の用意を始めてもらう→準備ができたという通知が届いたら取りに行く、という流れです。これならば具合の悪い子どもを待合室で待たせる必要もありませんし、兄弟姉妹がいる場合に薬局で子どもが騒ぎ始めて困る心配もありません。ショッピングセンターの中の薬局などであれば、買い物を済ませてから薬を取りに行くこともできますし、急いでいない場合は翌日以降の受け取りでも可能な場合がほとんどですので、時間を有効活用できます。
これは多くのお薬手帳アプリについている機能なので、ぜひチェックしてみてください。この時、一点だけ注意があります。それは処方箋の有効期限です。処方箋には、もらった日を含め4日間という期限があります。アプリで先に写真を送っても、処方箋の原本を薬局に持って行かなければ有効期限が過ぎて、薬を受け取ることができません。この場合は改めて病院に行くか、薬局から病院へ問い合わせをして、有効期限の延長を許可してもらう必要があります。うっかり忘れを防ぐためにも、できるだけ受診した当日に薬を取りに行くことをおすすめします。
服用ゼリーの活用方法
基本的な服用ゼリーの使い方
「お薬を飲んでくれない、どうしよう」というお悩みは多くのママさんが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
苦みなどの味の問題、以前に薬を飲んだ時に嫌な思いをしたなどのほか、鼻づまりで飲み込みにくい、体がだるくて食欲そのものがわかないなど、子どもが薬を嫌がる理由は様々です。言葉で会話ができる年齢なら良いのですが、まだしゃべれないような小さな子どもの場合、なぜ薬を嫌がるのかがわからない場合も多いでしょう。
薬が嫌い、おいしくない、などの理由で服用してくれない場合は、服用ゼリーを試してみるのがおすすめです。見た目はおやつで食べるゼリーと似ていますが、薬をしっかり包み込み、味を隠しながら飲み込みやすい作りになっています。
お皿やスプーンにゼリーを少量出して、その上に薬をのせます。さらに薬を包み込むようにゼリーを追加でかぶせ、このまま噛まずに飲み込むのがポイントです。かき混ぜてしまうと、甘みのコーティング成分が溶け出して苦味が強く出てしまうこともありますので注意してください。
服用ゼリーにもいくつかの味があります。やや割高に感じるかもしれませんが、どうしても必要なときの最終手段として用意してみるのも良いかもしれませんね。
薬を飲むときに役立つ食品
服用ゼリーの他にも薬を飲ませるときに役立つ食品がいくつかありますのでご紹介します。とはいっても、薬によって混ぜて良いもの、混ぜると逆に強烈な苦味が出るものなどもありますので、詳細な組み合わせは薬をもらう薬局で必ず確認するようにしてください。
ほとんどの場合で問題がないのが、チョコアイス・プリンなど甘みが強く、柔らかくて飲み込みやすいものです。しかし0才〜1才の頃は、そもそもチョコレートをあげていない、卵アレルギーの確認ができていないのでプリンは避けたいなどの問題もあるかもしれません。その場合は、ジャムも有効手段のひとつですので、子どもに合うものを見つけてみてくださいね。
我が家の事例をご紹介
子どもにもできる!お薬管理法
我が家の子どもは、毎日、数種類のアレルギー薬を飲んでいます。その中のひとつに、毎朝、舌の下に錠剤を入れて溶かして飲むという特殊な服用方法のものがあります。これは鏡を見ながら子どもが自分で舌の下に薬を乗せて飲んでいるのですが、子どもと相談した結果、現在は洗面所の歯ブラシと一緒に置いてあります。
まず、鏡を見ながら飲むので、洗面所は最適な場所です。そして朝は何かと慌ただしいですが、歯磨きをするときに必ず薬が視界に入るため、飲み忘れの予防にもなっています。横に小さなカゴを用意して薬の殻をそのカゴに入れてもらい、日中に私が飲み忘れがなかったかを確認しています。
毎日飲む薬がある場合は、動線を考えて生活スタイルの中にうまく組み込むような工夫をすると、子どもでもある程度管理できると思います。
家に1台!?電動鼻水吸引機器メリット・デメリット
実は子どものアレルギーが発覚した時、我が家には、電動の鼻水吸引器がありませんでした。鼻水が止まらない、何度も病院に通う、本人はうまく鼻をかむことができず常に鼻をすすっている。このような状態が続いた結果、鼻の菌が耳まで行ってしまい、中耳炎を起こしました。そこで検査をした結果、アレルギーが発覚したのです。
電動の鼻水吸引器は1万円以上するものがほとんどで、高価であることが唯一のデメリットだと思います。しかし我が家ではもう3年以上使っており、充分もとが取れたとも感じています。
アレルギーに限らず、単純な鼻水の風邪をひいた場合、薬をもらったとしても完治までに2週間以上かかる場合が多いです。鼻水を吸ってあげるだけでも、子どもはかなり呼吸が楽になります。多い時には1日20回ほど吸う日もありますが、薬に頼るだけでなく、こうしたおうちでのケアも非常に有効的ですので、検討してみてはいかがでしょうか。ちなみに我が家では、鼻に入れるパーツを多めに購入しており、3人の子どもたちが自分で吸うこともしばしばありますよ。
まとめ
今回は、日常の中で使える薬の豆知識や、ちょっとした風邪の時に思い出して欲しいポイントをお伝えしました。かなりの情報量になりましたので、一度にすべてやろうとせず、できそうなものからぜひやっていただけると嬉しいです。
できることならば病院にも薬局にも行かず、元気に過ごせることが一番ですね。健康な体には、食事、運動、睡眠の3つが大切と言われています。子どもはまだまだ自分の体調を自己管理できませんので、ちょっとした変化に気づけるよう、普段の様子をしっかり把握しておくことが大事ですね。