家を建てることになって初めて「棟上げ」や「上棟式」の存在を知ったという方も少なくないでしょう。せっかくだからやってみたいと考えている方は、方法や相場を知っておくことで、慌てず対応できるので安心です。この記事では、古くから行われてきた上棟式の意味をはじめ、やり方や流れ、準備などについて解説します。
棟上げや上棟式について
棟上げは、家を建てる中でも大事な工程のひとつです。だからこそ、その工程が無事に終わったお祝いとして、上棟式を行います。まずはそれぞれの意味について具体的に説明します。
棟上げとは
木造住宅の建築工事では、最後に屋根の上部に木材を架け、柱・梁・屋根といった家の骨組みになる部分の工程が完了します。この最後に組む木材が「棟木」と呼ばれているため、骨組みを最後まで作りあげることを「棟上げ(むねあげ)」と呼びます。また、建前(たてまえ)や上棟と呼ぶこともあります。
棟上げの日は朝から作業を始め、1階の柱から屋根に至るまですべての骨組みを、1~2日で作りあげます。この日だけは、他の現場の大工さんたちを招集して手伝ってもらうほどの、大掛かりな作業です。
ただし、木造住宅でも2×4工法や2×6工法、プレハブ住宅などでは、棟上げという工程がそもそも存在しません。
上棟式とは
上棟式とは、家屋の守護神と大工の神を祀って、棟上げを無事に終えられたことに感謝するとともに、最後まで工事の安全を祈る儀式で、棟上げ式とも呼ばれます。神恩に感謝すると同時に、施主は建築現場の関係者に料理やお酒をふるまったり、手土産やご祝儀を渡したりするなどして、労いの気持ちを表します。
最近では上棟式を行わない方も多くいますが、地域によっては文化として根強く残っていたり、その土地の風習でやり方が異なったりする場合もあります。方法がわからないという方は、親族やハウスメーカーに相談してみるのもよいでしょう。
棟上げと上棟式のやり方や流れを解説!
上棟式を行う場合でも最近では略式で行う人が増えています。派手な儀式というよりも、集まってくれた大工さんを含めたすべての人たちに、施主が感謝を伝えたり挨拶をしたりする機会、という意味合いが強くなっています。
簡略化されているとはいえ、上棟式を行うことで、大工さんたちとの距離が縮まり、家が完成したあと何か困ったときに相談しやすい関係が築けるのです。また、棟上げ以降も気持ちよく工事してもらうことにもつながります。
地域によっては、賑やかに小銭や餅をまく、餅まきを行ったり、華やかな宴会が昔は行われたりしましたが、最近ではそこまで本格的な上棟式を行うケースは少なくなりました。また、上棟式をやらないからといって大工さんたちが手を抜くということはないため、最近では上棟式を行わないケースも多くなっています。
棟上げまでの流れ
棟上げ当日、大工さんたちは適宜休憩を挟みつつ、重機などを使いながら一気に骨組みを組み上げていきます。作業にかかる時間は、建築する物件や季節によって異なりますが、たいていはその日の午後4時頃にすべての作業が終了します。午前10時頃と午後3時頃に休憩を挟むことが多いため、そのタイミングを見計らって、お昼ごはんや飲み物、お菓子を差し入れて労いましょう。事前に施主側で用意したい旨を伝え、問題がないようであれば、感謝の意を込めて用意しましょう。
上棟日当日は、他の現場の大工さんたちに応援に来てもらっていることもあり、棟上げ以降の工程も続けて行う場合があります。また、小雨が降っているなど多少の天候不良に見舞われても、人員や機材の関係で、作業が延期になる可能性は低いようです。
上棟式の流れ
正式な上棟式は、神主さんに住宅建築中の現場まで来てもらって行うため、以前は多くの人が神主さんに依頼をしていました。しかし、近年主流の略式では神主さんを呼ばず、棟梁や現場監督、ハウスメーカーの人などが代理で式を取り仕切ることが多いようです。
以下では、略式の場合の大まかな流れをご紹介します。
- 棟梁が棟木や祭壇に、御幣や棟札を飾る
- 「四方固めの儀」棟梁と施主が家の四隅に酒・米・塩などをまく
- 無事に工事を進められるよう祈願し、二礼二拍手一礼をする
- 「直会(なおらい)の儀」施主が挨拶をしてから乾杯する
- 棟梁や関係者を紹介して一言挨拶をいただく
- 上棟式を手締めでしめくくる
- 施主から、出席してくれた関係者へご祝儀などを渡す
直会での挨拶は、これまでお世話になった関係者への感謝と、引き続き行われる工事の安全第一のお願いをシンプルにまとめましょう。一言感想を付け加えると、聞いている側も嬉しいでしょう。
挨拶例としては、「ここにいるみなさまのおかげで、無事に上棟式を迎えることができました。ありがとうございます。本日一気に家の輪郭が形作られるのを見て、楽しみな気持ちがより一層大きくなりました。完成まで作業するみなさまにおかれましては、引き続き安全第一でお願いいたします。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。」といった具合です。
また、ご祝儀や引き出物を受け取ることは、ハウスメーカーや施工業者によっては禁止されている場合もあります。ご祝儀を渡したい場合は、事前に受け取ってもらえるかどうかを、担当者に確認しておくと安心です。
棟上げや上棟式で準備しておくべきこと
現場で作業する方の希望や予算などによって異なりますが、準備の際に押さえておくと役に立つポイントについて紹介します。
人数を把握する
お弁当やお菓子などのおもてなしや、ご祝儀などを用意するために、きちんと人数を把握しておくことは重要です。ハウスメーカーなどに問い合わせ、当日作業に携わってくれる方や上棟式に出席する方の人数を確認しましょう。
住宅の規模や工法によって異なりますが、棟梁、大工さん(応援の方を含む)、現場監督、重機の操縦者、ハウスメーカーなどの方を合わせ、7~15人前後の場合が多いです。
棟上げや上棟式に使う物を準備しておく
棟上げ作業中の水分補給や、上棟式で出席者が神酒を飲むときのために、紙コップは用意しておくと便利です。また、儀式で使う神酒や粗塩、洗米も施主が準備するものと考えておきましょう。
さらに、棟梁が飾る御幣や棟札も施主で用意します。棟札とは、お祀りする神様の名前や上棟年月日、施主・設計者の名前などを墨で書いたお札のことで、上棟の記念にもなります。ハウスメーカーが用意してくれるケースもあるようですが、自分で用意する場合は神社で入手できます。
当日になって慌てることのないよう、特に上棟式で使う小物は、施主が用意するのかハウスメーカーが用意するのかをしっかりと確認しておくとよいでしょう。
おもてなしの準備
作業中に差し入れる昼食や飲み物、休憩時間につまめるお菓子などは、高価なものである必要はありません。お昼ごはんはスタミナがつくお弁当など、また好みに合わせて選べるよう、数種類用意するとよりよいでしょう。お茶は人数分、お菓子は2000円前後のものであれば十分です。ただし、大工さんたちの希望によっては「お茶だけでお願いしたい」「差し入れは何も必要ない」という場合もありますので、事前に忘れずに問い合わせましょう。
ご祝儀は、役職によって用意する金額が異なります。相場は、棟梁が1~5万円、現場監督が0.5~3万円、その他の職人が1人2000円~5000円程度です。あくまでも気持ちですので、相場よりも低くても問題なく、実際渡さない人も多くいるようです。
おわりに
上棟式を行うにはある程度お金がかかり、事前にしっかりとした準備も必要です。しかし、実際に棟上げに立ち会うと、自分の家が建てられていくさまに感動する方は非常に多いものです。そのような特別な日に、作業をしてくれた大工さんたちを労い感謝を伝えられれば、きっと思い出深い1日になるでしょう。