産後のママは育休を取得して、子育てをする方が多いと思います。2022年に新しい制度がスタートした「産後パパ育休」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。夫婦で協力して子育てをするためにも、今回はこの新しい制度について詳しく解説します。
産後パパ育休の内容ってどんなものなの?
2022年に改正された育児・介護休業法の中に取り入れられたもので、男性の育休取得を促すために、新しく決められました。父親が子どもの生後8週間までの間に、最長で4週間の育休を2回まで分けてとることが出来るものです。この制度を利用して、男性も子育てに積極的に関わりながら、家事や育児の負担を分担することも期待されています。
男性の育休取得の低さも話題になっていますが、いざ男性が育休を取得しても「何をしたら良いのかわからない」という戸惑いの声も聞かれるようです。
今までの男性育休取得経験者の実際の声も参考にしながら、新しい制度を活用するためにも詳しく内容をみていきましょう!
産後パパ育休と育児休業ってどう違うの?
名前が似ているけど、内容の違う二つの制度の違いについて紹介します。
<産後パパ育休>
対象:生後8週間以内の子どもの男性
取得可能期間:子どもの生後8週間以内に最長4週間
分割取得:2回に分けて取得可能(初めにまとめて申請が必要)
申出期間:原則休業の2週間前まで
休業中の就業:労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で就業可能
※休業中の勤務は所定労働日・所定労働時間の半分まで
<改正前の育児休業制度>
対象:1歳未満の子どもを養育する男女(自営業・フリーランス除く)
取得可能期間:子どもが1歳まで(最長2歳まで)
分割取得:原則分割不可→改正後は2回まで取得可能(取得の際それぞれに申出)
申出期間:原則一か月前まで
休業中の就業:原則不可
上記の通り、それぞれ多くの項目で違う点がありますが、最大の違いは産後パパ育休中でも労使協定を締結すれば就業できることです。
産後パパ育休は、男女とも取得することの出来る育児休業とは別に「子どもが生まれた直後」の男性の育児休暇を目的とした制度です。(※養子縁組などの事情で産休を取得していない場合は女性も可能)子どもが生まれることで、生活が大きく変わるタイミングで男性も育休をとることで、母親のサポートや育児参加することを目的とされています。
通常の育休と産後パパ育休は併用することができるので、家庭の状況に応じて上手に活用することがおすすめです。
新しく創設された産後パパ育休の押さえておきたいポイントとは
今回紹介している産後パパ育休の柱となっているのが、育児・介護休業法です。2022年10月1日から改正になり、男女問わず仕事と育児の両立を後押しするために変化しています。
大きく変化したポイント
・産後パパ育休の新設
・育児休業が夫婦ともに分割して2回取得可能に
夫婦で育休を交代することが出来るようになったことで、女性の職場復帰のタイミングや子どもの保育園の入園の時期など、柔軟に選択することができます。
産後パパ育休を取得するための条件
・原則として産後8週間以内の子を養育する産後休業をしていない男女労働者
・雇用形態が日雇い労働者ではないこと
・期間を決めて雇用される者は、申出時点において、子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過するまでに、労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない場合
産後パパ育休を実際に取得する際の手続きとは?
下記の内容を記載した書類の提出が必要です。
- 申出の年月日
- 産後パパ育休を取得する従業員の氏名
- 申出に係る子の氏名、生年月日、従業員との続柄
- 休業開始予定日と終了予定日
子が養子の場合には、養子縁組の効力発生日なども必要になります。
決められた書式はないので、会社ごとの形式となるため、申出の際には確認してから書類を用意するようにしましょう。会社からの指定がない場合は、厚生労働省のホームページに見本があるので、参考にして作成しましょう。
会社によって、書面ではなくFAXや電子メールなどで申出が可能な場合もあります。
必要事項を記入して、勤務先の会社が定める申出期限までに提出することで手続き完了になります。
産後パパ育休中の給付金ってどうなっているの?
産後パパ育休中にも経済的な支援が得られるようになりました。出生育児休業給付金というものが支給されます。
<支給要件>
・休業開始日前2年間に賃金支払基礎日が11日以上あること
(ない場合は就業している時間数が80時間以上の完全月が12か月以上あること)
・休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業時間数が80時間)以下であること
<支給金額>
休業開始賃金日額×支給日数×67%
<申請期間>
子どもの出生日の8週間後の翌日から起算して2か月後の月末まで
産後パパ育休を取得した後に、事業主が必要書類をハローワークに提出することで、給付金が給付される流れになるため、忘れずに申請を行うようにしましょう。
産後パパ育休で賞与が減ってしまうって本当?!
育休をとることで収入が減ってしまうのでは?というイメージがあり、実際の育休取得率にも大きな影響がでているので、気になる方も多い所だと思います。
実際に育休を利用して賞与が減るかどうかは、会社員として働いているか、公務員として働いているかによって、大きく異なる場合が多いようです。
会社員(民間企業)の場合
会社の就業規則により異なりますが
・全額もらえる
・評価月のうち勤務した日数分だけもらえる
・全額もらえない
という3つのパターンがあります。
公務員の場合
賞与の基準日より6か月前の勤務日数に基づいて支給される
育休取得 1か月以内:満額支給
1~5か月以内:勤務日数に応じて数%~数10%支給される
6か月以上:全額支給されない
賞与の計算方法は会社により異なりますが、一般的に賞与と呼ばれる部分は欠勤日数に応じ、単純に減額されます。
(例)賞与が6か月で計算される場合
→1ヵ月の育休取得で1/6減額
賞与の構成や、会社の計算方法によって違いがあるため、勤務先の賞与計算を確認する必要があります。
どこで働いているかによっても違いはあるかもしれませんが、一般的には育児休業期間が1ヵ月以内であれば減額されないところが多いようです。すなわち産後パパ育休の期間であれば期末・勤勉手当は減額されず、昇給にも影響はありません。
毎月の給与分は、社会保険料免除と給付金で補うことができるため、産後パパ育休の期間であれば金銭面の不安はなく過ごせます。
最近の男性の育休取得率は?現状と課題
2022年には働く男性の育児休業の取得率は17.13%となり、過去最高となりました。
育休取得率の調査を始めてから、上昇傾向が続いていて、微増ではありますが男性の育児参加が社会的に進んできています。
しかし、働く企業の規模によって、取得率に差があるようで、大企業ほど男性の育休取得に対する理解や対策が強化されているのが実情です。
中小企業の人手不足や、育休を取りづらい雰囲気や、周囲の理解が得られないと感じてしまうことなどから、育休をサポートする社会的な制度があっても、育休を取らない方がいるという課題が残っています。
男性の育休を後押しするためにも、人手不足の解消だけでなく、企業による働き方の改善を行っていくことで、政府が目標としている2025年の男性の育休取得率50%に少しでも近づいていけることを願います。
産後パパ育休の新設によって企業が行うべきことは?
政府が新しく優れた制度を新設してくれても、企業側の準備が不十分ではスムーズな育休取得に繋がりません。企業側はどんなことを行っていけば良いのかを紹介していきます。
・育児休業や産後パパ育休に関する研修などの実施
企業の管理職は、それぞれの制度に対してきちんと理解をしておく必要があります。
企業として、育休制度や産後パパ育休の活用が進んでおらず、どのようにしたら良いかわからない場合は、厚生労働省が主体となって情報発信やセミナーなどを行う「イクメンプロジェクト」や育休制度の推進を目指す企業を支援する「仕事と家庭の両立支援プランナー」などがありますので、利用してみるのもおすすめです。
管理職などの上層部の理解が深まってから、全ての労働者を階級ごとに分けるなどの工夫をして、企業で研修を行い、周知していくことが必要です。
制度に関する情報はアップデートされたり、日々の業務の中で意識が薄れていくこともあるため、定期的に実施することがおすすめです。
職場の理解度に合わせた内容にするためにも、研修前後にアンケートなどの調査を行っていくと、更に充実した研修が行えます。
制度を利用するには、育休を希望する者だけでなく、上司や同僚などの意識が変わっていくことが重要となる為、欠かさず実施しましょう。
・相談窓口など専門的な部門の設置
育休制度や産後パパ育休などの利用を希望する者やその同僚が、なにかわからない事や困ったことがある時に、社内に気軽に相談できる窓口を設置することが必要です。
また、準備が整ったら窓口をきちんと活用できるようにすべての労働者にきちんと周知していきましょう。対応する担当者の研修なども忘れずに実施することが望ましいです。
・企業の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の提供や収集
育児休業や産後パパ育休を実際に取得した労働者の事例を、同じ企業で働くすべての人が平等に情報を見ることができる状態にしておくことです。
事例の公表や、男性の育休取得率などを公表することで、周囲の労働者にも制度を利用しやすい状況をつくることにもつながっていくでしょう。職種や雇用形態にとらわれずに、制度の利用を促せることが大切です。
・企業内における育児休業や産後パパ育休制度の取得を推進していることを周知する
すべての労働者に対して企業が制度を推進していることを、ポスターや社内の掲示板などを利用してアピールしていきましょう。
育児休業などの制度をきっかけに、就業規則が変更になった場合も忘れずに周知しましょう。企業としての方針を、目につくところに掲示しておくのも良いでしょう。
・個別の対応
本人や配偶者の妊娠・出産の申出があった労働者に対し、育児休業や産後パパ育休制度に関する内容や給付金についての説明を行いましょう。同時に取得する意向があるかどうかも、確認する必要があります。
個別に対応することで、利用の後押しができるだけでなく、企業のなかでの分業体制などを事前に整えることが可能になります。
育児休業の取得期間によって、企業内での体制の配慮も異なるため工夫が必要です。
今回新設された産後パパ育休の利用によって、短期の休業が増える可能性もあるため、業務をフォローする体制を組織的に行うことが重要です。
労働者の多様化する要望に対応できる、柔軟性や業務の連携体制などを意識して行っていきましょう。
2025年からは育休給付金が8割から10割にアップ?
現在は両親ともに育休を14日取得した場合、給付率67%と育休中の社会保険料免除を含めると実質手取りの8割の金額が給付されています。
今後は給付率が80%程度に引き上げられる方向で調整されていくことが発表されています。実際に引き上げられる時期は、まだ発表されていませんが、2025年度からの実施を目指して進められています。
2025年度以降新しく実施された場合、社会保険料の免除分を含めると給付金の支給額は手取りで10割相当になります。
また、育児休業明けに時短勤務をした際には、労働時間や日数の制限を設けずに賃金の一定割合を支給することもあげられています。
育児休業を取得しなかった理由の多くは、収入が減ることを懸念したという背景があるため、このような対策でさらなる男性の育児参加を増やして、男女問わずワークライフバランスの実現と向上を社会全体で目指していくことが望ましいですね。
新しい育休制度を利用して家族の時間をさらに充実したものに
新しい制度を使って男性の育休取得率が増えるだけでなく、男性の育休取得の経験者が増
えることで、経験者のメリットを伝えていくことで、推進にもつながっていくことでしょう。有意義な制度をしっかりと理解したうえで上手く取り入れて、男性も子どもとの時間を大切に過ごすことで、家族の絆も深めていけると良いですね。
育休制度の利用は労働者のメリットだけでなく、企業側にとっても出産や育児を理由とする離職の防止や満足度の向上にもなるため、メリットは大きいのではないでしょうか。
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