子どもが成長するにつれて必ずと言っていいほど経験するのが、風邪や病気による小児科の受診ですよね。そしてその後は、薬局で薬を受け取ることも多いでしょう。
今回は子持ちの薬剤師である私が、 病院受診の判断についてや、薬局に行くときに知っておくと便利なことをお伝えします。
子どもが風邪をひいた!受診の目安は?
発熱、鼻水、咳は、いつ何科を受診すべきか?
ひとことで風邪と言っても、40度近い高熱が出る場合もあれば、軽い咳や鼻水の症状だけという場合もあり、どのタイミングで何科を受診すべきか、判断に迷うこともありますよね。
子どもの場合、基本はまず小児科の受診で良いでしょう。風邪の症状から肌荒れなどの皮膚症状まで、私もかかりつけの小児科の先生にお世話になりました。大人と違い、子どもは症状が急に悪化することがあったり、風邪のように見える症状の裏に何か病気が隠れていたりすることもあります。子どもの全身を診てもらえる小児科には安心感がありますね。
一方で、長期に渡って鼻水が続くと中耳炎を起こすこともあります。のどや鼻の症状のみであれば、はじめから耳鼻科を受診しても大丈夫です。小児科と耳鼻科、どちらを受診するか明確な決まりはありません。家からの距離、待ち時間、慣れている病院か、など総合的に判断して決めると良いでしょう。
また、鼻水の症状は長引くことも多いです。子どもはまだ自分でうまく鼻をかむことができないため、鼻水吸引器などを導入し、家庭でできるこまめなケアで対応していくこともおすすめです。
夜間の発熱、受診すべき?
日中は元気だったのに、夜中に熱が上がってくることはよく見られる症状です。痙攣、意識が朦朧としている、息苦しそうにしているなどの症状が見られる時は、夜間であっても迷わず受診するのが良いでしょう。急変にも対応してもらえるよう、救急車を要請した方が良い場合もあります。
熱が高くても水分補給ができて、ある程度の睡眠がとれているのであれば、無理に夜中に受診する必要はありません。
それでも対応に迷う時は、一度「#8000」に電話相談をしてみてください。これは、厚生労働省が行っている子ども医療電話相談事業です。全国同一の番号「#8000」にかけると、住んでいる都道府県の相談窓口に自動でつながり、休日や夜間、子どもの症状に対して判断に迷うとき、医師や看護師に直接相談することができます。ここで緊急受診の必要性を聞いておくと、自宅で様子をみることになっても安心できると思います。
夜間の電話対応時間は、各都道府県によって若干異なります。下記のリンクを参照にお住まいの地域を確認してみてください。
(参考)
厚生労働省のHPより。子ども医療電話相談事業について
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
ジェネリックって何?似たような名前のものがたくさんあるのですが…
ジェネリック医薬品とは
小児科の受診が終わると、次は薬局で薬をもらうことが多いですね。毎回同じ薬局に行くと決めている人もいれば、病院から一番近い薬局でもらうという人もいるでしょう。ところで、ジェネリック医薬品という言葉を聞いたことはありますか?
ジェネリック医薬品とは、厚生労働省の認可を得て製造および販売される、新薬と同じ成分を含んだ医薬品のことです。
新薬は、医薬品メーカーが10年〜20年の歳月をかけて研究開発してこの世に誕生します。ここから数年間は特許が与えられますが、この特許が切れると他のメーカーも新薬と同じ成分を使って薬を作れるようになります。
「ジェネリック医薬品は値段が安い」という話を聞いたことがあるかもしれませんね。新薬の開発には莫大な研究費用がかかりますが、ジェネリック医薬品にはそれがかからないため、場合によっては新薬の半分程度の金額で薬を受け取れることもあります。
管理には気をつけて!ジェネリック医薬品の注意点
現在、国の医療費削減のためジェネリック医薬品が推奨されています。 毎月定期的に通院して薬を受け取っている場合は特に、費用を抑えるためにもジェネリック医薬品をおすすめします。
ジェネリック医薬品は様々な医薬品メーカーによって作られており、同じ成分で同じ効果が期待できる薬であっても、包装の見た目や味が異なる場合があります。一方、名前に関しては「薬の成分名+医薬品会社」とするパターンが多く、非常に似ています。
さらに、薬局ごとに異なるメーカーのジェネリック医薬品を在庫として置いているため、「成分は同じ、名前は似ている、見た目や味は違う、薬局ごとに取り扱っているメーカーがさまざま」、こうなると混乱を招きやすいですね。
ある程度子どもが大きくなってくると、薬の管理を本人に任せる場面があるかもしれません。ジェネリック医薬品に関する正しい知識を身につけ、誤った服用をしないように注意が必要です。
実はこれもよく知らない!ドライシロップって液体の薬ですか?
ドライシロップとは
ドライシロップは、名前に「シロップ」がついていますが、実際は粉薬の一種です。中でも、水に溶かして飲むことができるタイプを指し、略して「DS」と表記される場合もあります。溶かしたあとも甘みがあって飲みやすいのが特徴です。一般的に小学生以上になると、少しずつ錠剤が飲めるようになる子どもが増えてくるものの、小児科では非常によく出される粉薬ですね。
粉薬との違い
実は粉薬には、ドライシロップの他にもいくつか種類があります。サラサラした細かい粉と、つぶつぶした顆粒と呼ばれるものです。薬の成分の特徴によって適切な形で作られています。
ただ、これらの種類を覚える必要はなく、「粉薬」と言えば病院でも薬局でも話が通じますので安心してください。
粉とシロップ、実際どっちがいいの?
粉とシロップ、それぞれのメリット・デメリット
小児科で受診の受付をするとき、問診票の中に「粉、シロップ、錠剤、どれを希望しますか?」という項目を見かけたことはありませんか?
シロップは甘くて飲みやすい一方、菌の繁殖を防ぐため冷蔵庫での保管が必要です。期限も1週間程度と短いことが多く、長期保存には向きません。熱を下げる、咳や鼻水を止めるなど、必要な時だけ飲めば良い薬も取っておくことができないので、余った分は破棄することになります。
粉薬には、先ほど説明した水に溶けるドライシロップと溶けないタイプがあり、溶けないタイプでも水の中に入れてかき混ぜて飲むことが可能です。しかし、溶けないタイプは時間をおくと粉が沈澱したり、種類によっては苦味を感じて飲みにくいものもあるので注意が必要です。そしてシロップと違い、一定期間は自宅でも保存できる、持ち運びが便利という利点もあります。
薬剤師ママとしておすすめなのは粉
3人の子どもを育てる母親として、私は毎回粉薬の処方をお願いしています。理由は、シロップは子どもが嫌がった時に対応ができないからです。一度服用を拒否されてしまうと、他に飲んでもらう方法がありません。
しかし粉薬ならば、甘いアイスやゼリーで包み込む、お薬団子にして口の中に入れるなど、他にも飲ませるための手段がいくつかあるので工夫して服用させることが可能です。
ただしここで注意したいのが、先ほどもお伝えした粉薬の保管期間です。これは薬局によって説明が異なりますが、3ヵ月〜6ヵ月としているところが多い印象です。子どもの薬は、体重に合わせて量を計算しています。そのため成長して体が大きくなると、以前もらった薬では量が合わない、ということもあります。
頓服(とんぷく)といって、症状がある時だけ飲めばよい薬は、取っておくといざという時に役立ちますので、どの程度まで保管して良いのかをあらかじめ薬局に確認しておくことをおすすめします。
処方の内容について先生に聞きにくいことは◯◯で聞いてみよう
最後に、薬に対して疑問がある時に使えるちょっとした裏技をお伝えします。
残っている薬があるから処方の量を調節してほしい、以前使った時にあまり効果を感じられなかったため別の薬を試してみたいなど、処方箋の内容に関わることは、誰に伝えるのが良いと思いますか?
処方するのは医師であるため、もちろん診察の時に医師に直接確認するのが望ましいです。しかし、聞き忘れてしまったり、忙しそうにしている先生を目の前にしたら相談できなかった、ということもあるでしょう。
そんな時は、会計時に小児科の窓口で改めて処方箋の内容について確認するのが望ましいです。薬局でも対応はできますが、結局は病院に連絡しなければならないため、待ち時間が長くなってしまいます。小児科の受付であれば、その場ですぐ先生に聞いてもらうことが可能ですし、場合によっては再度呼ばれて先生と直接お話しできることもあるかもしれません。
処方された薬の内容について、いつ、誰に確認すれば良いかというのは、悩ましいところですよね。診察時に聞きそびれてしまってもチャンスはまだあるので、早めに確認してください。
また、薬の効果や内容については、薬局の窓口で質問すれば、薬剤師が対応してくれます。質問をきっかけに患者さんと会話できることを嬉しく感じている薬剤師は意外と多いので、気軽に話しかけてみてくださいね。
まとめ
子どもを連れての病院受診は時間もかかり、大変ですよね。また、子どもが小さければ小さいほど、薬の服用の意味を理解してもらうことも難しいため、嫌がって飲まないことに苦労しているママも多いことと思います。緊急連絡先を調べておく、こんな時はどうする?という判断基準をもっておく、などを普段からやっておけば、いざという時に慌てずに済みます。疑問点はなるべく平常時に解決しておけると良いですね。