住宅も長く住んでいると、色々なところが古くなったり傷んできたりします。そんなときに行うのが、住宅のリフォームです。現在、リフォーム業界は市場規模の拡大に伴い、他業種から多くの企業が参入するなど注目を集めています。
今回は、リフォーム業界の概要をはじめ、現在の動向や問題点について紹介していきます。
リフォーム業界とは?
まずはリフォームを取り巻く業界について、その特徴を見ていきましょう。
そもそもリフォームとは、古くなったお風呂を新しい設備に変えたり、汚れた外壁を塗り直したりするなど住宅を改修して「新築(に近い状態)に回復させる」ことを住宅の場合には意味しています。住宅ばかりでなく、衣服の仕立て直しの場合にも使われる和製英語です。賃貸住宅などで入居者が代わった場合に、「原状回復」をすることもその一例です。また、従来の間取りを変えたりする大規模な改修は「リノベーション」呼ばれますが、これもリフォームの一種とする場合もあります。
リフォーム工事は専門的な様々な工事が含まれますが、請負金額が消費税込みで500万円未満の軽微な工事(建築一式工事については1,500万円又は150㎡未満の工事)の場合には建設業許可は必要ではありません。また、約8割が500万円未満の軽微な工事なので、住宅に関わる様々な企業が参入しています。
リフォーム業界は様々な企業から注目されている
現在、リフォーム業界は新規参入が相次ぐなど、注目が高まっています。どのような企業が関心を持っているのか、消費者の視点から見ての特徴など、近年の動向についてご紹介します。
リフォーム業界に参入している企業を紹介
リフォーム業界に参入している企業は、家電量販店やホームセンター、家具店など、「住宅の建設を本業としていたわけではないけれど、住環境の構築には不可欠な商品を扱っている」といった業界です。これらの業界は、消費者が転居などで住環境を一新する際に、大きなビジネスチャンスを得てきたという共通点があり、リフォーム業界との相性が良い業界です。
家電量販店ではヤマダ電機やビックカメラといったその業界でもトップを争う大手がリフォーム業に積極参入していますが、その意図は、消費者がリフォームを機に家をオール電化にしたいと思ったときに、家1軒丸ごとに相当する家電や電気設備などを販売できる、といったところに狙いがあるようです。
また、ホームセンターではカインズホームやジョイフル、家具店ではニトリやIKEAなど、いずれも各業界の有名企業がリフォーム業界に参入しています。さらに近年では、衣類や家具などで「無印良品」ブランドを展開する良品計画も住宅のリフォームないしはリノベーションに力を入れています。
注目を集めている理由は?
このようにリフォーム業界に他業種からの新規参入が多い理由としては、その市場規模が大きく、今後も安定して需要が増え続けていくと予想できることが挙げられます。
国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画として策定されてる「住生活基本計画」でも、既存住宅流通及びリフォームの市場規模を令和12年には14兆円、長期的目標として20兆円を成果指標として掲げられています。
リフォーム業界の企業の種類や分野
リフォーム企業はそれぞれ異なる得意分野や特徴を持つので、満足のいく施工結果を得るためには、希望する工事の内容にふさわしい企業や業者を選ぶことが大切です。以下では、リフォームに関わる企業を分野ごとに分け、そのそれぞれのメリットや特徴を簡単に説明していきます。
大手ハウスメーカー
大手ハウスメーカーは自社に建築デザイナーを多数抱えているほか、新築のノウハウを蓄積しているので、大規模なリフォームや建て替えに近いリノベーションをしたいときに適しています。ハウスメーカーは大手ならではの経験の蓄積や安心感があるのも強みです。
リフォーム専門会社
リフォームを中心に事業を行うリフォーム専門店は、工務店や設備メーカーなどが元々の得意分野を活かして立ち上げたところが多いです。それゆえ元の業種ごとにそれぞれの強みがあるほか、工事の完成までが比較的早く、アフターサービスがしっかりしているなどのメリットがあります。
地場工務店
地域密着型の経営を行う地場工務店は規模が小さい分、職人と工務店、顧客の距離が近いため、融通が利きやすく、細かなオーダーも反映しやすいのが強みです。小規模な施工にも柔軟に対応してくれることが期待できます。コストも大手と比べて比較的安価でできるというメリットもあります。
家電量販店・家具屋・ホームセンター
小売店や量販店から参入してきた企業にリフォームを依頼するメリットとしては、物販も同時に注文することで割引がききやすいほか、家具や家電などの商品と合わせたリフォームになるので、完成した際のイメージが想像しやすいことも挙げられます。
設備工事会社
キッチンやお風呂、トイレなどの設備工事会社もリフォームに関わる企業です。お風呂をユニットバスに変えるなど、設備ごとの得意分野で確かな技術を持っています。細かなところへの気配りも期待でき、サービスの種類によっては、設備の設置に合わせて壁紙などの内装のリフォームをしてくれる場合もあります。
リフォーム業界の問題点・今後について
様々な企業が参入して活性化しているリフォーム業界ですが、その問題点も浮き彫りになってきています。以下では、業界の抱える問題と、今後の見通しについて解説します。
リフォームは高い
当然ながらリフォームは、その規模が大きいほどコストが高くなります。内訳は、大まかに言えば「工賃と材料費の合計」です。材料費は差がつきにくいですが、工賃に関しては大手と地元の工務店などの間で金額が大きく異なる場合があります。大手は抱えている下請け業者や管理者が多いので、工賃が高くつきがちです。一方で地場工務店は、末端の職人までの距離が近いので工賃を抑えることができます。
トラブルが多い
リフォームにおいては、営業担当者が強引な手法を使うこともあり、顧客が不満を抱えて後でトラブルになることも多々あります。たとえば、独立行政法人国民生活センターには、「契約を急かされたり、過度に不安を煽られたりして必要のないリフォームをしてしまった」という相談が近年数多く寄せられています。
こうしたトラブルをなくすには、企業の誠意ある対応とともに、消費者もはっきりと希望を伝え不要な工事は断るなど、自律した姿勢が求められます。
下請け業者任せが多い
リフォームにおいては、たとえば大手のハウスメーカーに依頼しても、実際の作業は下請け業者任せという場合が多く見受けられます。もちろん、下請け業者もその業種のプロが対応するので、必ずしもクオリティの低下などに直結するとも言い切れないことには注意が必要です。
とはいえ、大手と下請け業者で報酬を分け合う分、コストが高くなるという側面もあるので、それを避けたいのであれば良質な地場工務店を探すことをおすすめします。
おわりに
上記のような問題点を抱えているリフォーム業界ですが、多くの企業が参入することによって、消費者の業者選びの選択肢は増えています。自分が家のどこをどのようにリフォームしたいのか目的を明確化し、多くの選択肢の中からそれに適した企業を選び出して依頼することが、リフォームを成功させる上での秘訣となるでしょう。