「先祖代々の土地なので有効に使いたいが、自宅を建てるには少し広すぎる」と、所有する土地を持て余すケースも少なくありません。このような土地を有効に使いたいという方のニーズに合う土地活用手段が「賃貸併用住宅」です。
「賃貸経営は初期投資額が高く、ローンを組むのも大変」とお考えかもしれません。しかし、条件次第で住宅ローンも使える賃貸併用住宅は、土地活用のハードルを下げてくれます。 今回は、土地の有効な活用策である賃貸併用住宅と、そのメリットをご紹介します。
土地活用ができる「賃貸併用住宅」とは
「子どもが独立したので、部屋を持て余している」「土地が広く余っているが、地域柄、店舗や駐車場にしても活用が見込めない」……このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。
このような場合、広い家を一部改修したり、自宅のすぐ隣にアパートなどを建てたりして「賃貸住宅」とすることで、有効な土地活用として賃貸経営を検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには
ご自宅を賃貸併用住宅とする際に住宅ローンが使えると聞くと、驚く方も多いかもしれません。一般的に住宅ローンは、個人の方が住まう家の購入時に限って使えるとされています。ローン商品の中でも特に好条件とされる住宅ローンが賃貸併用住宅に使えるのなら、ご検討中の方は「ぜひ利用したい」と考えることでしょう。 現に、住宅ローンと一般的なアパートローン(アパート賃貸事業のためのローン)の金利や諸条件を比較すると、賃貸経営のハードルの高さが実感できます。また、「それが住宅ローンの条件で実現できるならばチャレンジしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、すべての賃貸併用住宅に住宅ローンが使えるわけではありません。多くの銀行では、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するための要件に「自宅の床面積が賃貸スペースよりも広く取られていること」を挙げています。つまり、あくまで「住宅が主体で賃貸部分は付属物」でなければならないということです。銀行によって異なりますが、数字で言うと、「自宅にあたる部分の床面積が全体の50%以上」であることを条件としている場合が多いです。
賃貸部分の割合が高ければ、その分賃貸収入が増える可能性は上がりますが、賃貸部分が自宅部分の床面積を上回ると住宅ローンを利用できなくなる可能性が非常に高くなるわけです。
「まずはよく考えて計画を立ててみよう」と思った方のために、次の項目では賃貸併用住宅で住宅ローンを使うメリットについてご紹介します。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するメリット
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用することのおもなメリットには、以下が挙げられます。
アパートローンより条件が良い
事業目的のアパートローンと比較すると、住宅ローンには条件面で以下のような3つのメリットがあります。
- 借りやすい
平屋で快適に暮らすには、テラスやウッドデッキなどの外構をうまく取り入れる方法もおすすめです。外構に建物と接した広いスペースがあれば、見た目に安定感が生まれます。
テラスやウッドデッキを設置する際は、メンテナンスが大変にならないようにし、いつまでも楽しく使えるスペースにしましょう。 - 金利が低い
住宅ローンは数あるローンの中でも、特に低金利なローン商品です。例えば返済期間が30年以上でも、金利が1%余りという場合も。ちなみに、アパートローンの金利は低くても2%、高くて5%弱ほどとなってしまいます。 - 長期で組める
住宅ローンは契約者がその家に暮らして返済できる最大年数で期間を決められるため、35年など長期のローンを組むことができます。
一方アパートローンでは、返済期間は建物構造・資金使途別により異なりますが、一般的には「アパートの法定耐用年数」の期間内となっています。一般的な木造のアパートであれば法定耐用年数は22年ですから、35年のローンが組める住宅ローンの方が毎月の返済負担を減らせます。
家賃収入を住宅ローンの返済に充当すれば負担が軽くなる
ローン返済の負担を、家賃収入によって軽くすることも可能です。賃貸経営が軌道に乗り、家賃収入を得ることができれば、その金額を住宅ローンの返済に充当できます。
住宅ローン控除が適用される
住宅ローンの利用を検討した方なら、「住宅ローン控除」についてご存じの方も多いでしょう。この住宅ローン控除が、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用した場合にも、自宅部分に限り適用されます。
仮に賃貸併用住宅で7,000万円のローンを利用した場合、自宅部分の面積が全体の60%ならその金額の60%、つまり4,200万円分に住宅ローン控除が適用されるというわけです。
相続税を節約できる
賃貸併用住宅を活用することで、相続の際の税負担を軽くできることもメリットのひとつです。賃貸併用住宅の場合には、賃貸部分の相続税評価額が敷地・建物それぞれで低く抑えることができるため、相続税の税負担が軽減されます。建物の相続税評価額については、自宅部分は固定資産税評価額となり、賃貸部分は固定資産税評価額の70%で計算しますので、相続税が低減されます。また、敷地についても、他人に貸している部分(貸家建付地)は自分で利用している敷地部分(自用地)よりも相続税課税評価額が低くなります。
おわりに
土地が余っていても、お店や駐車場の経営などでうまく収入を得ることは、所在地などの諸条件次第では困難な場合があります。また、アパート事業を始めることは事業用ローンの条件が厳しく、難しいことも多いものです。
そのような場合、優遇条件やメリットの多い賃貸併用住宅を検討することは一案です。自宅部分を賃貸部分より広く取る配分にし、住宅ローンを利用することができれば、低金利で融資が受けられ、相続税の負担を抑えることもできます。
ただし、住宅ローンを有効活用して賃貸併用住宅を建てる場合でも、賃貸経営を始めることには必ずリスクがともないます。専門家などに相談しながら、じっくり考えて計画を立ててみてください。