授乳中はママの母乳を通じて、直接赤ちゃんへ栄養を届けているため、食べ物や飲み物など普段よりも気を遣うという方も多いと思います。今回は、授乳中に食べてはいけないもの、飲んではいけないものを紹介していきます。
薬や食べ物の成分が赤ちゃんに届いてしまうの?
産後のママが赤ちゃんに与える母乳は、血液から作られています。血液は、ママの食べた栄養から作られているため、ママが飲んだ薬や食べたものが母乳に移行すると言われています。
しかし、多くの薬では妊娠中におなかの中で移行する量と比べると、母乳中に含まれる量は1~10%程度と格段に少ないのです。薬が含まれる母乳を飲んでも、赤ちゃんの血液に届くまでの成分はどんどん減っていくため、赤ちゃんに悪い影響を及ぼす可能性は低いと言われています。薬や食べ物について過剰に心配せず、ママの体調に応じて医師や薬剤師の指示通りに服用するようにしましょう。一部の抗がん剤など授乳中に使用できない薬もありますので、注意が必要です。授乳中は、自分で判断せずに医師や薬剤師などに授乳中であることを伝えたうえで、相談するほうが安心して服用できるのでおすすめです。
薬を服用するタイミングを
・赤ちゃんに授乳した直後にする
・授乳と薬を飲む間隔を考える
などの工夫で、より影響を減らすこともできます。
授乳中のママは特に食事のバランスを大切にしましょう
産後のママの食事は、母乳の分泌量や母乳の質が悪くなるなどの影響がでるため偏った食事や栄養不足などは避け、ママ自身の健康や赤ちゃんの栄養を考えてバランスのとれた食事を心がけましょう。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、授乳中のママは通常時よりも+350kcal/日のエネルギーが多く必要になります。[*1]
数字だけではピンとこないという方も多いと思いますが、350kcalはご飯で例えると1膳(160g)で250kcalなので、大盛り1膳分弱です。3食で分けると、気持ち多めにするくらいの量です。
赤ちゃんのお世話をしていると、ゆっくり食事をする時間がないことも多いですが、食事を抜かずに主食・副菜・主菜を3食の食事でとるようにしましょう。
<授乳中におすすめの食事>
・野菜を多く使った和食
具だくさんの味噌汁、焼き魚、湯豆腐など産後のままに必要な栄養素を手軽に摂取できます。
・片手でも食べられる食事
いろいろな食材が入った炊き込みご飯をおにぎりに、野菜と肉などの入ったサンドイッチなどお世話の間にサッと食べられるもの。
・手軽に栄養補給のできる食材
毎食料理を作るのが大変なときや、疲れている時は無理せず、手軽に栄養補給できる食材をストックしておくのもおすすめ。
作り置きや冷凍食品、ミールキットなどを活用して上手に食事バランスを整えましょう。
<授乳中に意識して摂りたい栄養素>
・鉄分
授乳期の母乳などによって不足しがちで、貧血になるリスクがあるため意識して摂る必要があります。動物性のたんぱく質やビタミンCと一緒に摂るとより効果的です。
鉄分を多く含む食材…ほうれん草、小松菜、納豆、レバー、プルーンなど
・カルシウム
母乳を作るために大量のカルシウムを必要とします。食事だけで不足すると、ママの歯や骨から取られてもろくなるため、意識して摂取したい栄養素です。
カルシウムを多く含む食材…牛乳(1日1~2杯目安)、小魚、小松菜、モロヘイヤ、厚揚げ、ひじきなど
・葉酸
赤血球を作るのに欠かせない栄養素であり、ホルモンバランスを整える効果も期待できるので心の安定にも役立ちます。子宮の回復にも効果があります。水溶性で調理すると、成分の半分が失われてしまうため、調理の際は、電子レンジや油炒めなどがおすすめです。
葉酸を多く含む食材…枝豆、納豆、芽キャベツ、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、いちごなど
栄養素ではありませんが、授乳中に赤ちゃんに水分をとられることや、母乳の9割は水分であることなどから、水やお茶など、水分補給はこまめに行いましょう。
<産後のママが避けた方が良いもの>
・脂っこい食べ物
揚げ物や菓子パン、ピザ、ケーキ、チョコレート、スナック菓子など。
油分や糖分が多い食品をたくさん食べると、血液がドロドロになって母乳の質が悪くなる恐れも。さらに乳腺が詰まって乳腺炎を引き起こすことも。
・体を冷やす食べ物・飲料
生野菜やトマト、ナス、きゅうり、柿、りんごなど。
体を冷やしてしまうと血流が悪くなり、母乳の出が悪くなってしまうので控えたほうがよいでしょう。飲み物も、温めたほうが良いでしょう。
授乳中にカフェインの多い飲み物は大丈夫?
授乳中にカフェインはよくないということは、よく知られているかと思います。実際にママが摂取したカフェインは、30分~60分で血中濃度が最大になり、母乳にも1%程移行されます。赤ちゃんは肝機能もまだまだ未熟であること、カフェインに対する耐性もないことから、過剰摂取すると赤ちゃんに以下の影響が出るとされています。
・情緒不安定になる
・興奮気味になる
・寝つきが悪くなる
など
<カフェインを多く含む飲み物>
・コーヒー
・紅茶
・緑茶
・エナジードリンク
・コーラ
など
コーヒーだと1日1~2杯程度に抑え、飲むタイミングも授乳の直前に飲むのは避けるなど、工夫をしながら授乳中でもカフェインの含まれた飲み物を楽しんでください。
授乳中にお寿司は食べてよい?
妊娠中は生魚による水銀や、リステリア菌などの影響からお寿司を控えていたと思います。授乳中はどうなの?と疑問に思う方もいるかと思います。結論からいうと、ママがお寿司を食べることによって、母乳から赤ちゃんへ影響を受けることは低いため、食べても問題ありません。
授乳中は乳腺炎の心配があるため、いくらなどの魚卵・トロなど脂肪分の多いものは食べすぎないよう注意が必要です。
また、授乳の有無にかかわらず、鮮度の良いものを選び、できるだけ早く食べるようにしましょう。体調に不安がある時は、抵抗力も落ちているため、普段より注意し、食中毒などを避けるため火の通ったネタを選ぶなどの工夫をするとより安心です。
授乳中にはちみつを食べても大丈夫?
授乳中のママがはちみつや、はちみつを含む食材を食べても母乳を通して赤ちゃんへ影響することは考えにくいため、問題ありません。
しかし、生後1歳未満の赤ちゃんがはちみつを食べると、乳児ボツリヌス症を発症する恐れがあるため、1歳未満の赤ちゃんには与えてはいけません。大人がはちみつを食べた後のスプーンや食べ残しなど、赤ちゃんの口に入らないよう、注意が必要です。
授乳中のアルコールはNG
授乳中にお酒を飲むことは避けた方が良いでしょう。アルコールを飲むと30~60分位で母乳に移行し、母乳のアルコール濃度は90~95%と血液中とほぼ同じ濃度になります。また、アルコールを飲むと母乳を出すホルモンを抑制し、母乳が出にくくなり味にも影響があります。
アルコールを飲んだ直後に授乳すると、赤ちゃんはアルコールを含んだ母乳を飲むことになります。赤ちゃんは肝臓機能が未熟のため、アルコールをうまく分解することができません。体内に残り、脳や体の発達の遅れや、ひどい時にはアルコール中毒の症状がでることもあります。
赤ちゃんにとって、良い影響がなく、授乳中は飲酒しないほうが安全といえるでしょう。
授乳中どうしてもお酒が飲みたい時は、ノンアルコールビールを飲むことをおすすめします。アルコール分が0.00%と表示されているノンアルコール飲料なら、特に安心です。
ノンアルコールと表記されていても、0.5%など微量のアルコールが含まれている可能性もあるので、アルコール分が全く含まれていない商品を選ぶときは、パッケージの記載をきちんと確認してから購入しましょう。
授乳中にロキソニンやカロナールなどの薬は飲んで良い?
授乳中に薬を飲んでいいのか、赤ちゃんに影響はないのか、不安に感じる方も多いと思います。赤ちゃんのお世話などで、痛みが出ても我慢することはママにとってつらいものです。
薬によって、飲むことができるかどうか異なるため、事前の確認が必要です。
一般的に、カロナール(アセトアミノフェン)は、母乳に排出される量がとても少ないため、赤ちゃんへの影響が少ないことから、授乳中でも使用されています。
ロキソニン(ロキソプロフェン)については、薬の添付文書に「授乳中の使用は避けること」「薬を使用中は授乳を中止する」とあるため、可能であれば使用しないほうが安心です。
一方で、母乳に排出されるロキソニンの量が少ないこともわかっているので、処方されることもあるようです。使用する際は、医師や薬剤師に相談してからが良いでしょう。
ロキソニンを服用した後は、念のため授乳を避けて、8時間以上経過してから再開、一度母乳を搾乳し、廃棄してからの授乳が望ましいとされています。
授乳中に湿布は使って良い?
授乳中のママは、一日に何度も授乳の姿勢をすることで慣れないうちは、身体に負担がかかることもあります。ホルモンバランスの乱れで痛みが出やすく、腕や肩、腰などを痛めてしまうことも。
母乳には直接影響がないように感じますが、湿布は大丈夫なのかな?と心配になる方もいるかと思います。
湿布は皮膚から様々な成分を吸収して、痛みを和らげるため、内服薬に比べると母乳に影響する可能性は低いので、少量であれば心配ないようです。
市販品に多い湿布薬の成分で授乳中でも安全に使えるものとして、インドメタシンとジクロフェナクナトリウムがあげられています。
病院で処方されることの多いモーラステープとロキソニンテープですが、ロキソニンテープに含まれるロキソプロフェンナトリウム水和物は母乳に移行しにくいことから、授乳中の使用制限はありません。
一方で、モーラステープは授乳期の安全性がまだ確認されていないため、厚生労働省は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用するように、医師に通達しています。
湿布を使用する際に、不安がある時は医師や薬剤師などに相談するのが安心です。
まとめ
授乳中のママは、気を付けることが多くあらゆることが心配になってしまうこともあるかと思います。
母乳育児には、ママと赤ちゃんにとっても多くのメリットがあげられています。
赤ちゃんとのスキンシップや、ママの身体の回復・病気の予防、赤ちゃんの身体が丈夫になることなどがあげられています。
授乳期間は大変だなと感じることも多いいですが、赤ちゃんに授乳できる期間は限られています。適度に休息をとり、リラックスしながら限られた授乳期間を無理なく楽しみながら過ごしていけるとよいですね。